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伊達きよ

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BL小説をのんびり書いています。既刊『黒猫の黄金、狐の夜』『白銀の人狼は生贄の王子に愛を捧ぐ』『わんと鳴いたらキスして撫でて』『春になっても一緒にいよう』『人生はままならない』『幸せになりたいオメガ、騎士に嫁ぐ』他。アイコン、ヘッダーはおもちもんちさん( @omochimonchi )です。

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@kiyokiyomaroro
伊達きよ
3 months
【書籍情報】 タイトル:黒猫の黄金、狐の夜 発売日:2024年5月31日 著者:伊達きよ イラスト:yoco先生 価格:1540円(税込) ISBN:9784041149898 黄金の毛を持つ狐と夜闇のような毛を持つ黒猫、そして黒猫の手首で揺れる小さな鈴が目印です。
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伊達きよ
1 month
クラスに、いつも何か食べてる男の子がいる。 バスケ部で、やたらデカくて、お弁当箱もやたらデカくて。休み時間もよくパンだのおにぎりだの食べてる。しかもなんでも残さず美味しそうに。それを「いいなぁ」と眺めてるは同じクラスの男の子。食べているのが羨ましいのではなく、美味しそうに食べて
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伊達きよ
2 years
あるところに狐がいました。狐は嘘つきではありませんでしたが、狐の父親は嘘つきでした。嘘をついて村の皆からお金を騙し取り、それを持って逃げました。小狐一匹だけを置いて。 村の人は残された小狐を責めました。小狐は昨日まで親切だった村の人達がとても冷たく尖った言葉をぶつけてくるので
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伊達きよ
20 days
睡眠を必要としない人外が人間が寝てるのを見て「なんだこれ」って毎晩ジッ…と観察してるの可愛い。 人間がむにむに寝言言ったり寝返りうったりするの見て「ほー」ってなってる。そのうち見てるのが楽しくなってきて「人間就寝観察日記」とかつけだす。ある日人間がそれを見つけて、
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伊達きよ
2 years
ドラゴン族に嫁に行くことになったけど、閉鎖的で人間の生態をよく知らないドラゴンたちに囲まれてなんか色々困ってる人間くん。歳を聞かれて「二十だ」って答えると「赤ちゃんじゃん!」ってざわざわ。夫になるドラゴンも「いや、さすがにこないだ生まれたばかりの子を嫁に貰うわけには…」って
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伊達きよ
2 years
「一回だけ抱いて欲しい」って受けがお願いしてさ。基本的に来るもの拒まない攻めは「うーん?」って思いながらも今まで親友だと思ってきた受けを抱いてあげる。それがあまりにもしっくりくるもんだから「いい感じだし、またしようよ」って言っちゃう。と受けが真っ直ぐな目をして「じゃあ恋人になり
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伊達きよ
1 year
「お前に必要なものは全部俺が買ってやる」ってカードチラつかせながら恋人の買い物にむりくりくっついて来たはいいものの、1軒目が早速カード使えない店(商店街のお豆腐屋さん)でしょんぼり顔するスパダリ好き。続く2軒目3軒目(八百屋、精肉店)でもそんな感じで「なー!カード使える店行こうよ
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1 year
朝起きたら学生時代から片思いしてる友達が横に寝てて、は?ってなる男。どうやら酔った勢いでそういう関係になったらしい。もしかして、あわよくばこのまま恋人に……って思ってたら飛び起きた友人に「うわっごめん!酔ってたからってことで…これっきりで!な?」って明るく「ごめん」されて。
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伊達きよ
1 year
派手顔だけど中身は地味な男子高校生くん。自己紹介初手で「趣味は糠床をかき混ぜることです」って言ったばかりにあだ名はヌカち。勉強も運動も中、特に面白いことを言うでもなく実に地味〜に生きてる。入学当初はその顔面力で陽キャたちにカラオケやらラウワンやらに誘われたものの中身が極めて地味で
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伊達きよ
6 months
何しても天才くんに勝てない秀才くんが努力して努力してようやくたった一度勝利をもぎ取って。自分が今まで味わってきた屈辱を思い知れって感じで天才くんを見たら、普通に笑顔で「凄いね」って感心したように言われて。それでなんかぐしゃぐしゃな気持ちになる秀才くん。好き。
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伊達きよ
2 years
に、彼の耳にもそんなふうに聞こえていたらいいなと思いながら、狐は「ありがとう」ともう一度伝えました。 狐の耳には、ちりちりと可愛い鈴の音が、いつまでもいつまでも、途切れることなく響いていました。 終わり
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伊達きよ
1 year
#創作BL なんか目覚めたら「キスしないと出られない部屋」ってデカデカと書かれた部屋に閉じ込められてた男。やれやれ俺とキッスするのはどこの子猫ちゃんだい?って振り返ったらズンッ…って感じのエイリアン的な生物(?)が立ってて「ギャーーー!!!」ってなる。阿鼻叫喚のち
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伊達きよ
3 months
フェロモン弱すぎΩくん。βどころかαにも感じ取って貰えず、第二性を言うと毎度「えっ、Ωなの?」って変な顔をされる。発情期も軽いし、誰かにフェロモン嗅ぎ取って欲しいわけでもないしまぁいいかな…って思ってたけど、なんと高校生になって初めて恋に落ちてしまう。相手はクラスの優しい委員長くん。
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伊達きよ
20 days
人外はふふふって笑いながら「今日は布団で丸まって寝た。その後出てきた。可愛い」って日記書いてる。もうどうしようもないから「いっそ寝ない」って起きとくけどそのうち寝てる。人外はおほ〜ってなりながら「いつもより起きてた。その後ぐらぐらして白目むいて寝た。可愛い」って書いてる。
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伊達きよ
1 year
#創作BL いつもくっついてくる同級生くんがいてさ。俺好かれてるなぁ〜って思ってたら家の人(お金持ち)が準備した、金で雇われたボディガードだったってやつ。毎日一緒に登下校したのも、テスト勉強見てくれたのも、「俺キスしたことない。練習させてよ」って言ったらほんとにキスしてくれたのも、
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伊達きよ
1 month
そして「とびきり大きいの作っていくよ」って送って、スマホを胸の上に置いたままくすくす笑って、幸せな気持ちで寝る。 夢の中ではバスケ部男子くんがバスケットボールみたいに大きいおにぎりを頬張りながら「美味い!」って笑ってて。男の子はそれを見てやっぱり笑ってしまうっていう、そんな話。
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伊達きよ
2 years
夫ドラゴンは青ざめて震えながら「死ぬな…」って人間をぎゅっと抱っこする。「いやだから後四十年くらいは生きるから…」って言うけど、「四十年…!!!」って余計泣かせるだけ。ドラゴン族みんなで人間嫁の寿命を伸ばす方法探しが始まる。
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伊達きよ
20 days
自分の寝てる写真が大量に貼られてるのを見て「のわー!?」ってなる。「やめて欲しい」っていうのをどうにか伝えようとする(言葉通じない)けど、人外はわからないから「おや喜んでる」ってほくほくしてる。で、今日は寝てるところ見せないぞ…って布団かぶって寝るけどそのうち大の字になって寝てる。
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伊達きよ
1 year
初エッ…の次の日、朝ご飯に手作りのパンとかシャウ○ッセンのウインナーをボイルで出してくる攻めと、そもそも朝ご飯を食べるっていう概念がない受けの組み合わせ好き。「卵はどうする?(目玉焼きかゆで卵かオムレツか的な意味)」に対して「あ?冷蔵庫に入れる…?」って返す。育ちの違いBL。
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伊達きよ
24 days
#創作BL ドムサブ。普段は強気だけどプレイになると「ごめん」しか言えなくなるsub。前にペアだったDomが自分勝手な奴で、「subなのに可愛くない」「可愛くなくてごめんって謝れ」って言われ続けてたから。最初はちくしょ〜って思ってたけど続けるうちに「俺の方が変なのか」って思い込むように。
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伊達きよ
2 years
言い出して。いやいやいや人間の世界では敵年齢だからって必死に説得して、そのついでに「六十になる前には死ぬから」って漏らしたら「死ぬのぉ〜〜!?!?」ってまた騒然とする。ドラゴンからとったら六十なんてまだまだ子供。周りのドラゴンたちは急に「長生きさせなきゃ」ってわいわいしだすし、
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伊達きよ
3 months
創作BL 綺麗な幼馴染の特別だと思っていたけど、そうじゃなかったんだって気付いた男の子の話。 隣の家に住む幼馴染くんはそれはもう美しい顔をしていて小さい頃から老若男女問わず声をかけられるんだけど基本的に誰に対しても「ふん」って感じ。他人に冷たく何事にも無気力、でも顔はべらぼうに良い。
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伊達きよ
1 year
#創作BL 写ル○ですの時代にさ、「お前が好きなもんたくさん撮っといたぞ」って仲の良い友達にカメラ渡されてさ。いやこれ俺が今度旅行で使おうと思ってたやつじゃんあと何枚残ってんの?…え?残り二枚?ふっざけんなよ〜ってなってさ。結局、そんな半端な枚数の持ってけるかよって新しいヤツを
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伊達きよ
1 year
#創作BL なんかこう上流階級の人間たるものパートナーと恋人を別にするのが当たり前、なDom/Subの世界。「恋人に自身の膨れ上がった醜い欲望をそのままぶつけるなんてはしたない」とされてる、みたいな。で、金持ちボンボンなDomが苦学生Subとパートナー協定結んで楽しくやってたんだけど、
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2 years
基本的に誘われれば誰でも抱いてあげる、顔はいいけど風船より軽い男。でも誰とも付き合う気はない。ある日、長年の友達の友達くらいの立ち位置と思っていた真面目で大人しそうな男に「抱いて欲しい」と言われて驚く…けど、まぁよくあることなので「いいよ〜」って抱いてあげて。けど慣れてる感じじゃ
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伊達きよ
2 years
人間の嫁が来るぞ!ってことで付け焼き刃の知識で歓迎会とかすることになって。「肉は生では食わんらしいぞ」「じゃあどうやって食うんだ?」「なんと、焼くらしい…!」「えー!うっそー!」みたいなやり取りがある。んで、火を吐く系のドラゴンが「いくぞ?いくぞ?」ってちりちり小さい炎を出して
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伊達きよ
2 years
ドラゴン族に嫁に行くことになったけど、閉鎖的で人間の生態をよく知らないドラゴンたちに囲まれてなんか色々困ってる人間くん。歳を聞かれて「二十だ」って答えると「赤ちゃんじゃん!」ってざわざわ。夫になるドラゴンも「いや、さすがにこないだ生まれたばかりの子を嫁に貰うわけには…」って
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伊達きよ
1 year
行こうよ行こうよ〜」って散々駄々こねてようやく連れて行ってもらったドラッグストアで洗剤の詰め替えとトイレットペーパーをカードで買う。ほくほく顔でトイレットペーパー(2倍巻)を抱えるスパダリを見て「かわいいな」って思う堅実な恋人。お礼にロールキャベツ(肉と豆腐1:2)をご馳走してあげる。
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伊達きよ
1 year
#創作BL 保育園の時からの幼馴染はそれはもうへにょへにょ頼りなくて、「俺が面倒を見てやらねば」って常に気合い入ってた委員長タイプの男の子。高校に入学して、へにょ馴染みくんはどんどん背が高くなって女子には「ヴィジュアル強っ。勉強全然できないけど」「かっこよ…こないだ全教科補修
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1 year
未亡人のお父さんが美人で儚げで蠱惑的すぎて、連れてくる彼氏みんなそっちに行っちゃう男の子かわいそう。夏のある日、彼氏を連れて家に帰ると薄着で水やりしていたお父さんが「あ…〇〇のお友達?」って振り返って。きらきらと飛び散る水とどこか儚いその笑顔に虜になる彼氏。二日後に「ごめん…、
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伊達きよ
1 year
#創作BL 「俺って恋したことないんだよね」って言ったら「はぁ?」「恋は知らないけど性欲はある、と」「こわ。絶妙に会話が噛み合わないモンスターみてぇ」って友達に言われる感じのヤリチン大学生くん。ほんとに恋したことないし。えっちは恋じゃないし。恋してなくてもできるし。って拗ねてる。
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伊達きよ
1 year
#創作BL 妥協で付き合ってる同士(「男を好きな奴周りにそうおらんし、俺らで付き合う?」「あー…うん」みたいな始まり)だったのに付き合っていくうちに片方が「やばい。こいつのことほんとに好きになってる。好きってかもう好きすぎる。愛してる」ってなって、でも相手はあくまで妥協で付き合ってる
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伊達きよ
2 months
創作BL 人生で一番輝いてた時に付き合ってた元彼に再会して、「か、変わらねぇな」(本当に変わらない)って言ったら上から下まで見られた後「お前は、変わったな?」って真顔で言われてショック受ける連勤明けへろへろ男。あいつはあの頃と変わらずシュッとした感じなのに俺ときたら、俺ときたら…!
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伊達きよ
1 year
ネトゲの友達とオフ会したらいきなりイケメンが来た!みたいな話も好きだけど、期待通りのオタクが来るのもいいな、と。オタク同士すんごい気が合って(身なりも似たり寄ったりなので全然緊張しない)さ、「ハンマー将軍さん」「おぺぺさん」ってHNで呼び合って、連れ立ってネカフェ行って黙々と
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伊達きよ
1 month
貰えるおにぎりが羨ましいのだ。正確には、そのおにぎりを作った人が羨ましい。あんな美味しそうに食べてもらえたら大層嬉しいだろうなぁ。…なんて考える男の子は、家のご飯作り担当。お父さんは単身赴任、お母さんは夜勤ありの仕事で忙しい。ので、男の子が弟に朝昼晩作って食べさせているのだ。
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伊達きよ
1 year
#創作BL 同じサークル内に好きな後輩がいる男の子。キスの日にサークルの飲み会があってさ、馬鹿みたいに騒いで王様ゲームって流れになって「キスの日だから1番と5番がキス〜」ってなって。1番って書かれた割り箸持って顔を上げたら後輩が「俺5番っす」って言ってて。ドキドキしながら「はー?お前が
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伊達きよ
1 year
#創作BL スパダリくん(自分のことを攻めだと思ってるタイプ)がさ、恋人に贈り物するんだけどまぁ全然響いてなくて。じゃあ次は服だ、時計だ、ご飯ももちろん全部俺持ちで...、ってデート重ねるんだけど相手は段々冷めたような顔していって。 で、実際恋人くんは「はー?」って思ってる。プレゼント
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2 years
浮かぶのは「恋人になりたい」って言った時のあの真っ直ぐな目。 数年後、風の噂で海外のとある場所で見かけたって聞いて、居ても立っても居られず探しに行く。真っ直ぐなあの目に、ちゃんと真っ直ぐな気持ちで答えるために。
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伊達きよ
1 month
創作BL 異世界に呼び出されたのに「お前じゃなかった!お前じゃなかった!」と駄々こねられて、仕方ないから農家やる男の話。 仕事に疲れ切ったよれよれ男。「遠い所に行きたい…」って呟いた途端目の前がパッと光って異世界に。そこでやたら偉そうな龍神に「よく来たな我が伴侶……じゃないっ!」
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伊達きよ
2 years
悲しくなりました。けれど、自分の父が「悪いこと」をしたというのもなんとなくわかっていたので、文句は言いませんでした。 行くところもなく、狐はその村の外れにある荒屋に住み続けました。村の人はいい顔はしませんでしたが、面と向かって出ていけともいいませんでした。狐はひとりぼっちでした。
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伊達きよ
1 year
#創作BL 何にでも誰にでも優しい恋人。かくいう自分も街でふらふらしてる時に拾って貰ったしなぁ…、って肘ついて考える男の子。あの人が優しいのは俺にだけじゃないって思いながら同じく拾われっ子の犬を撫でる。 「自分だけが特別じゃない。調子に乗るな」って自分に言い聞かせていたそんなある日、
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伊達きよ
1 month
「卵焼き甘めで美味しい!」「このポテトサラダかにかまとコーン入ってる。俺好き〜」「枝豆と昆布のおにぎりうま、うま」って最初から最後までひとつひとつ感想を言って「めっちゃ美味いじゃん!えっ、逆になんでこれに不満があるの?」って弟に怒りだして。なんだか笑ってしまう男の子。
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伊達きよ
1 month
「家の夕飯もちゃんと残さず食ったからご心配なく」って空の皿とピースしてるバスケ部男子くんの写真が送られてきて。男の子は笑って、笑って笑って「ありがとう」って素直な気持ちを送る。そしたらすぐに「お礼は枝豆と昆布のおにぎりでいいよ」って返ってきて。男の子はもう一回笑って、
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伊達きよ
2 years
十年が経ちました。 狐は一度も悪いことをせず、むしろ人が困っていたら手を貸し力を貸し、村のために尽くしてきました。しかし、どんなにいいことをしても「所詮は狐の子供だから」の一言でいいことを無かったことにされました。狐の父の罪は狐の罪ではない、と思いましたが、それを狐が言うべきでは
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伊達きよ
2 years
「ありがとう」と言いました。狐は全身の毛が逆立つのを肌で感じました。それはおよそ10年ぶりに聞いた、混じり気のない「ありがとう」でした。その黒くて小さな命が愛らしくてかわいくて、狐は黒猫をソッと抱き上げてその腹に頬を寄せました。そして「どういたしまして」と答えました。
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伊達きよ
1 month
しかし最近高校生になった弟は、男の子のご飯を「美味しい」と言ってくれない。どころか「またこれ?」「飽きたー」「もっとおしゃれな飯がいい」「今日はいらない」と平気で言ってくる。そのくせお腹がすいたら「なんかないの?」なんて言ってくるのだ。料理のモチベーションも落ちに落ちて、
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伊達きよ
2 months
創作BL アイドルが好きで好きで好きすぎて自身もアイドルになったものの、人の視線が怖くなって引退後ほぼ引きこもりになってしまった元アイドルくん。引退からかれこれ云年経つのにいまだに店員の目が怖くてコンビニすら辛い。アイドル時代に稼いだお金でやりくりして(堅実)生活できてはいるが、
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伊達きよ
2 years
どうしてだか、涙が後から後から溢れて止まらず、狐は黒猫に見えないようにこっそりと涙を流し続けました。 続く。
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伊達きよ
2 years
ないということもわかっていました。狐は人の顔色を伺うのが得意になっていました。 そんなある日、狐は川で小さな籠を拾いました。中を覗いてみると小さな黒いものが入っていました。黒い、猫のようです。狐は家に帰ってミルクを温めてやりました。黒猫は目を閉じたまますんすんと鼻を鳴らしミルクを
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伊達きよ
2 years
メス堕ちさせられた後に歳取って捨てられたメスおじさん、かわいそう。「ずっと家にいてよ。俺が帰ってきた時笑顔で迎えてくれるだけでいいから」とか言われて仕事もまともにさせてもらえなかったので、無職期間が長すぎるし、そうなると就活も中々難しく。あっさり若い子に乗り換えていくらかの
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伊達きよ
2 years
村人は突然現れた黒猫を見て嫌そうな顔をしましたが、目の見えない黒猫にはその顔は見えません。狐は堂々と黒猫を育てました。黒猫さえ嫌な思いをしないのであれば、それでいいと思っていました。 黒猫はとても行儀のいい子でした。食べ方寝方歩き方、そのどれもが上品で、狐はその動きひとつひとつに
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伊達きよ
2 years
困らせて悪かったな」って。別に、恋人になってやってもいいのになぁ〜まぁ体の相性はいいんだし、また機会はあるだろ…ってふわふわした気持ちで寝て、目を覚ましたら受けはもうどこにもいなかったって話。 これまで友達として長い時間を過ごしてきて、色んな顔を見てきたはずなのに、思い返すと
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伊達きよ
2 years
たい、って言ったら?」って言って。思わず一瞬、ほんの一瞬だけど言葉に詰まってから「いや。まー…、うん、それもいいかも?」って言ってるうちに本当にそれがいい考えの気がして。「じゃあほんとに付き合っちゃう?」って半ば冗談っぽく言ったら、受けは優しく笑って「ううん」って言う。「大丈夫、
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伊達きよ
1 month
バスケ部男子の飾り気のない素直な態度が面白かったし、誰かに「美味しい」と言ってもらえたのがあまりにも久しぶりだったからだ。 その日からおにぎりとか、おかず一品とか、バスケ部男子に差し入れるようになる男の子。バスケ部男子はいつも「や〜、ありがとうございます」ってにこにこで受け取って
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2 years
見惚れました。なんて美しい子だろう、なんて可愛い子だろう、狐はいつもそう言って黒猫の額を舐めました。黒猫はくすぐったそうにそれを受け入れて「きっとあなたが育ててくれているからです」と答えました。黒猫はたいそう狐に懐いていました。 狐は黒猫がどこにいってもわかるように、とその首に鈴
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1 month
くれるし、「これのここが美味しい」「あれが美味かった」「今日も最高。ありがとうな」って感想と感謝の言葉を惜しまないし、「これお礼〜」って売店で人気のクッキーサンドとかアイスとか頻繁に買ってくれる。料理のモチベーションも上がって、久しぶりににこにこ元気になる男の子。
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2 years
求めました。が、それがそれがどこにあるのかよくわかっていないようでした。どうやら目が見えないらしいのです。狐は自らの指先にミルクを垂らし、黒猫の口元に持っていってやりました。黒猫はちうちうと狐の指先を吸いました。そして、皿いっぱいにあったミルクを全て飲み干した頃、小さな小さな声で
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伊達きよ
1 month
最近は台所に立つのも億劫になっていた。 そんなある日。その日もバスケ部の彼がおにぎりを美味そうに食べるのを見ていたら、不意に目があって「欲しいの?」って聞かれる。グループも全然違う彼に話しかけられて飛び上がる男の子。で、「ち、ち、違う。じろじろ見てごめん」って謝って、
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1 month
男の子はそれ見て最初は笑ってたけど、どんどん、悲しいと嬉しいとありがたいって気持ちがごちゃごちゃになって「ごめんね」「ありがとう」を繰り返しながらほとほと泣いてしまう。バスケ部男子はそれをからかうことなく「本当に美味いんだぞ」って笑ってくれて。
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伊達きよ
1 month
正直に「実は…」と眺めていた理由を話す。そしたら話を聞いたバスケ部男子は「ほーん」って感じで首傾げて「実際美味くないんじゃないの?」とか言ってくる。ムッとして「じゃあ食べてみてよ」ってその日の弁当を食べさせた…ら、「えー!めっちゃ美味そう!」「なにこの肉巻き、めっちゃ美味い!」
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伊達きよ
2 months
社畜が異世界転生したら社畜に出会ってかわいそうでなんか面倒みてあげてたら思った以上に仲良くなる話。 社畜、深夜に冷蔵庫に山盛り積んでるエナドリをごいごい飲んでたら目の前がパァッて光って気付いたら異世界。へぁ…ってなってたら目の前に真っ青な顔したキラキラな異世界人が立ってて。
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伊達きよ
2 years
それで黒猫の目がなおるように手術を受けさせてやるつもりだったのです。狐は「ずっと黒猫と一緒にいたい」という願いを箱に仕舞って鍵をかけて、縄でぐるぐる巻きにして心の泉に沈めました。代わりに、「黒猫を立派にしてやりたい。素晴らしい生活を与えてやりたい」という願いを掲げました。 続く。
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伊達きよ
1 year
#創作BL 古くてマイナーなゲームをプレイしてはSNSにぽつぽつ「面白かった」など投稿していた高校生の男の子。ある日「俺もそれ好きです」みたいなコメントがきて「お」と思って仲良くなって、そしたらなんと近隣の高校に通ってることがわかって。で、なんやかんやで会ってみたら話もあってほくほく
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伊達きよ
2 years
をつけました。村一番の金物屋で仕入れた上等の鈴です。まるで澄んだ小鳥の声よりまだ美しくリンリンと鳴る鈴の音は、美しく愛らしい黒猫にとても似合っていました。代わりに狐の毛皮をごっそりと売ったので、狐の尻尾はさびしくなりましたが、狐はそれでも満足でした。黒猫には見窄らしい尻尾も見え
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伊達きよ
2 years
ませんから、いいのです。黒猫は誇らしげに鈴を鳴らして狐に聴かせてくれました。狐が「あぁいい音だ。そこにいるのがすぐわかる」と言うと、黒猫は「いつでも側にいます」と言いました。狐は少し大きくなった黒猫をよいしょと抱き上げて、その腹に頬を当てて「うん」と頷きました。
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伊達きよ
1 month
そして「ごめんなさい」って素直に謝ってくれる。男の子は「いいよ」って言って、そして唯一バスケ部男子くんが食べなかった手作りのケーキを二人で食べて、弟の誕生日を祝う。 その夜、バスケ部男子くんになんてお礼を送ろうかな…と思っていたら、先に彼から
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伊達きよ
1 year
イケてる(と自分で思ってる)リーマン。いつもはきっちり髪を撫でつけてスーツでビシッと決めてるけど、休みの日はよれよれスウェット。んで、ボーッとスーパーに行ってカップラーメンを吟味してたら「あれ、先輩?」って話しかけられて。振り返ればそこには後輩(めちゃくちゃ営業成績が良くて
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伊達きよ
2 years
んだろう。そんな金があったら親父の罪滅ぼしにあてたらどうだい」と嫌味を言ってくるほどの成長っぷりです。狐の父が村人から騙し取った金は、狐が返していました。というより、返しきったはずでした…が、まだ利子が残っています。狐は後何年、後どれほど金を返さなければならないか知り
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伊達きよ
2 years
黒猫は健やかに育ちました。柔らかな毛はなめし皮のように艶やかに硬くなり、丸っこかった鼻先はつんと尖って、ゆるりと持ち上げた頬から見える牙はすらりと尖っていました。狐の足先ほどの大きさしかなかったのに、今はその半身ほどの高さまで背が伸びました。村人が「よっぽど良い物を食わせている
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伊達きよ
2 years
黒猫を拾ってから3回冬が来ました。黒猫は元気に育っています。いつの間にか、狐と同じくらいの大きさになってしまった黒猫のために、狐は新しく寝床をこさえてやりました。が、それぞれの寝床で寝たはずなのに、朝になると隣には黒猫がいました。黒猫は「あなたの側にいないと眠れない」と言いました
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伊達きよ
1 month
で、10分くらいでバスケ部男子くんがやって来る。「ちょうど部活終わりだった。爆速でチャリ漕いできた」って言って、男の子が作ったご馳走を見て、目を輝かせて「めっちゃ美味そうじゃ〜ん!」って笑って、どれもこれも、ぜーんぶ残さず「美味しい、美味しい」って食べてくれる。
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伊達きよ
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ませんでした。村人の誰も、狐にそんなことを教えてくれなかったからです。狐はきっと、自分が生きているうちに返せる額ではないのだと思っていました。昔はそれでいいと思っていました、が、今は少し違います。村で父親の罪を償って生きていくより、黒猫とどこか遠くでのんびり暮らしたいと思うように
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伊達きよ
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なってしまったのです。もちろん、そんなこと誰にも言えません。 黒猫には、「大きくなったら村を出て生きていくんだ」と言うつもりでした。黒猫は上品で美しく愛らしいのです。目さえ見えれば、きっと立派な職に就いて、素晴らしい人生を歩めるはずなのです。狐は、金と毛皮を貯めていました。
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伊達きよ
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メッセージがきて。しょぼ…ってなってしまう男の子。あまりにも悲しくて寂しくて、しょもしょもしてしまって。こんな時間に…と思いながらもバスケ部男子に「ご飯、食べに来ない?」って送る。すぐに「何送ってんだ」って気付いて、冗談…って送ろうとするも、その前に「食う」って帰ってきて。
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伊達きよ
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知ってるんだろう」って思ってる。男の子、意外とぼんやり男子。で、ビビってる弟に、バスケ部男子くんは「自分のために作って貰ったものは、ありがたく、残さず食え」って低い声で言って、のしのし帰っていく。弟は「え?え?」ってなったまま、けど明らかに泣いてたっぽい兄の顔を見て驚いて…、
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伊達きよ
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ちょうど弟の誕生日が近いから、ってことで、バスケ部男子に相談しながらメニューを考えて、わくわくしながら、当日張り切ってご馳走を作ってみる。が、待てど暮らせど弟は帰ってこない。今日は早く帰って来るって言ったのに…って思ってたら、弟から「友達と飯行くことになった〜。ご飯いらない」って
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伊達きよ
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あげるように何度も何度も頷きました。それでも黒猫が不安そうにしていたので、狐は言いました。「君が鈴を鳴らせばどこにいてもわかるから」と。「どこにいてもきっと見つけてあげるから」と。黒猫は狐を見上げて、はい、と頷きました。黒猫はとても賢くて、とても聞き分けのいい子です。黒猫は、
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ではなかった愛しい黒猫を思い泣きました。医者はそんな狐を見下ろし弾けるように笑いながら「あの子は黒猫ではないよ。獰猛で優秀な黒豹さ」と言いました。 狐の黒猫なんてものは、この世のどこにも存在しなかったのです。 続く。
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。狐はそんなはずはないとわかっていましたが、何も言わずに黒猫を受け入れてやりました。黒猫の願いなら、どんな小さなことでも叶えてやりたかったのです。 黒猫の体がしっかりとしてきたということは、手術を受けるだけの体力もついてきたということ。狐はこっそりと街に出て、医者に事情を説明しま
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そうこうしてたらそのうち弟が「ただいま〜」って呑気に帰って来る。で、家にいるデカい男に驚いて「わっ!?」ってなった後、「あれ、あ、〇〇選手!?」ってびっくりする。バスケ部男子くんは実は高校男子バスケ会ではまぁまぁ有名な選手。ちなみにそんなこと知らない男の子は「あれ、なんで
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狐は「ありがとう」と言いました。どうしてこんなに大事な言葉を忘れていたんだろうと不思議に思いながら、「ありがとう、黒猫」「ありがとう」と何度も何度も繰り返しました。こんなにも透き通ったありがとうを言うのは人生で二度目でした。 初めて混じり気のない「ありがとう」を聞いたあの時のよう
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した。医者は狐の話を親身になって聞いてくれました。そして狐の顔や毛皮をジッと眺めてから、狐の手に自身の手をするりと絡めてきました。「手術後は、その子を手放す気でいらっしゃると?」どうして手を触られているのかわからないまま、狐は正直に「あぁ」と頷きました。黒猫は見た目もいいけれど
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伊達きよ
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頭も賢いので、しかるべき教育を受けさせてあげたいと思っていました。もっと大きな街の全寮制の学園に入れてあげられれば、それが一番いいと。しかし、手術も受けさせて立派な学園に入れてやるには、金も毛皮も足りません。とりあえずは目の手術を優先して…、と語る狐に、なんと医者が「よければ私が
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��猫を抱き締めました。黒猫も、同じだけの力で狐を抱き返してくれました。狐は泣きました。黒猫に悟られないよう、静かに、ほろほろと。 父の罪を償うためだけにあると思っていた自分の人生に、もうひとつ、それとは比べようもない立派な意義が与えられたのです。狐は生まれて初めて「ありがとう」
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狐はいつも寝物語に外の世界の素晴らしさを語りました。「美味しいものがたくさんある」「狐さんのご飯が一番美味しいです」「綺麗な人や物がたくさんある」「僕の目には見えません」「金が…、何も不自由しないくらいの金が稼げる」「貴方と楽しく暮らせるだけのお金があればいいのです」しかし、
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伊達きよ
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なるまで助けることができなかった僕自身に……怒ってる、嫌いだ、苦しい……」眩しい世界の中で泣いていたのは、黒猫とはまるで違う、大きな黒豹でした。大きな大きな体を丸めて、おいおいと泣いています。どこからどう見ても黒猫ではない彼に、しかし狐は手を伸ばしました。思い切り伸ばして、その
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狐が送った音です。「黒猫」狐は吐息のような声を漏らしました。黒猫、黒猫、俺の黒猫。 世界は真っ黒に染まりました。黒猫の色です。狐は黒猫の色と音に包まれて、もうなにも怖くないと思いました。 続く
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大きな体を両手で包んであげました。 「黒猫」 うっうっ、と泣く黒豹を、狐は「黒猫」と呼びました。「俺の黒猫」と言って額を舐めてやると、黒豹はますます泣きました。もう首に回らなくなったのであろう鈴の付いた首輪は、手首にしっかりと巻かれていました。そこにいたのは、間違いなく狐の黒猫
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と心からの感謝を、誰にともなく述べました。 続く。
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返すのはお金でも毛皮でもなくていい。貴方自身で払っていただければ」と。狐は最初意味がわかりませんでしたが、手首を這う医者の手が二の腕まで伸びてきた時に、ようやく気付きました。狐はほんの少しだけ悩みましたが、ほんの少しの後にしっかりと「わかった」と頷きました。そも、狐には一生
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援助しましょうか」と申し出てきました。狐が驚いて顔を上げると、医者は「今のお話に胸を打たれました。良ければ私がお金を出しましょう」と。「本当に?」と驚く狐に、医者は「ただし」と話を付け加えました。「全額は援助できません。一部は狐さんにもご負担していただきたい」と。そして「やぁ、
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かかっても返せないだけの借金があるのです。それが少し増えたところで痛くも痒くもありませんでした。自分の体で黒猫を素晴らしい世界へ送り出せるなら、それ以上に良いことなどないと思ったのです。狐は用意周到な医者と契約書を交わして、来た時と同じようにこっそりと家に帰りました。
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そしてきつく縛った縄を解いて、箱の蓋を開けました。 「ずっと黒猫と一緒にいたい」 狐は、初めて自分の望みを口にしました。一緒にいたい、いたい、いたいよ、と寝床の中で繰り返しました。黒猫に幸せになって欲しかった、けれど本当は、それと同じくらい、狐は黒猫と一緒にいたかったのです。黒猫が
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どんなに外の世界の素晴らしさを語っても、黒猫はいつもこんな調子で、狐の首筋に鼻を押し付けちりちりと鈴を鳴らすばかりです。狐は耳を伏せて「困ったな」と内心考えてから「俺も金があると嬉しい」と言いました。すると黒猫が真っ黒な目を丸くして「狐さんはお金があった方がいいですか?」と問うて
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伊達きよ
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きました。狐は父狐や、村人、そして医者のことを頭に思い浮かべました。そして「そうだな」とこくりと頷きました。金があれば、金があったから、金がなかったから、狐は悲しい思いをしたり何かを諦めてきた気がします。実際のところ、金があれば幸せかどうかなんてわかりません。ただ、それでも、
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狐はごろりと転げ落ちました。が、その体を誰かが受け止めました。驚いて身をひくと、りんりん、と懐かしい音がしました。いつもの幻聴かと思いましたが、あまりにも「そこ」にあるように鳴るので、狐は「黒猫?」と虚空に向かって問いかけてしまいました。返事はありません。狐は躊躇いながらも口を
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伊達きよ
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狐の優しくとも残酷な嘘を信じました。 黒猫が、この小さな村の小さな家に戻ってくる事は不可能でしょう。なにしろ黒猫はこの村の名前も知りません。例え目が見えるようになっても、村までの道のりを知らないので、帰りようがありません。狐は自分がどれだけ残酷なことをしようとしているかわかって
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伊達きよ
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黒猫には金で不自由な思いをして欲しくありませんでした。今は無邪気に自分との生活を一番だと思ってくれる黒猫も、いずれはその不便さや不自由さ、息苦しさに気付くはずです。 最近、村の若い者がそわそわとした顔で黒猫を見ているのを狐は知っていました。狐の目だけにではなく、誰の目にも黒猫は
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です。 多分、聞かなければいけないことや、謝らなければならないことがたくさんあると思いました。が、今だけは、その全てを忘れて狐は黒猫を抱きしめました。黒猫の大きな腕が、今は小さくなってしまった狐の背中に回りました。その腕の、たしかな温もりを感じながら、
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魅力的に見えるのでしょう。それはそうです、だって、狐の可愛い黒猫なのですから。黒猫がその視線に気付かなくてよかった、目が見えなくてよかった、と心の隅でぼんやりと考えてしまってから、狐は「いけない」と思いました。心の泉に沈めたはずの願いが、その箱の隙間から漏れ出していたのです。
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伊達きよ
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季節がいくつも過ぎました。狐は黒猫が来る前と同じような生活をしていました。変わったことといえば、荒屋を訪ねてくる人物が一人増えたことくらいです。それは、あの医者でした。彼は狐からきっちりと借金を取り立てていました。「悪いことをするにはこの村はちょうどいい」と言いながら。彼は豪華な
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する事はない。それから、手術後すぐにお前が学校に行けるように手続きをしておいたんだ。うん、そう、ちゃんとお金を稼げるようにね。しっかり勉強するんだ。…え?もちろんいつでも帰って来ればいい。ここはお前の家なんだから……」 黒猫は何度も何度も狐に確認しました。狐はその不安を消して
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