ほんの少しだけ、希望を持っていた。上村健一の時も、青山敏弘、駒野友一、中山元気、佐々木翔、そして増矢理花。前十字靱帯断裂の大怪我を負った瞬間を見てきて、その全員が受傷後は立てなかった。激痛、そして膝に力が入らない感覚などもあり、とてもじゃないが自力で立つことはできない。まして、プレーするなんて。満田は立った。プレースキ

国立競技場のベンチには、50番と9番、二つのユニフォームが並べて飾ってあった。一緒に闘うんだ。工藤壮人と共に、闘うんだ。サンフレッチェ広島のチームとしての意志が、そこにはあった。ルーキー時代の2018年、工藤に優しくしてもらったという大迫敬介は、こう語った。「プレーヤーとしてはもちろんそうですけど、一人の人間としても本

信じがたいアクシデントが満田誠を襲った。

ストライカーがやってくる。いや、戻ってくると言うべきか。昨年のルヴァンカップ決勝ではＣ大阪の先発として出場して先制ゴールをゲット。一時は広島を絶望の淵に追い込んだ25歳のFW加藤陸次樹が、完全移籍で広島に加入することが決定した。加藤は2013年から双子の兄・威吹樹（南葛ＳＣ）と共に広島ユースでプレー。一つ上には荒木隼人

「川辺駿しかいない。彼を獲得してほしいと思っているけれど、どうなんでしょうか」川村拓夢のオーストリアへの旅立ちが決まった時、筆者は雨野裕介強化本部長にそう問い掛けたことがある。その時、彼は「ハヤオとは常にコミュニケーションをとっているんたけどね」と言うにとどめていた。本部長の表情を見て、筆者は状況を察した。2023年、

ＦＷをどうするか問題が、存在する。次の横浜FC戦、ナッシム・ベン・カリファが出場停止となり、ドウグラス・ヴィエイラは天皇杯で帯同せず。他の選手たちと同じような症状ではないが、コンディションに問題を抱えているのは確かだ。ピエロス・ソティリウはトレーニングに復帰済みだが、「何ヶ月も休んでいた選手に、今週末の試合で大きな期待

いわき戦の衝撃的な事故から約1週間、加藤陸次樹の元気な姿がサンフレパーク（吉田サッカー公園）のピッチにあった。脳しんとうの回復プログラムの最終日ということで、全メニューをフル参加したわけではなかったが、笑顔で芝生の上を走る姿を加藤は見せてくれた。額のテーピングは痛々しかったが、５針縫ったわけだから致し方ない。まだ、糸も

試合が終わって、顔も心も紅潮した状態で取材に入った。浦和のヘグモ監督は「浦和の素晴らしいサポーターの姿を見ることができて嬉しい」と言葉の口火を切り、「前半はいくつか自分たちにもチャンスはあった」と言いつつも「90分で見れば、広島の方が安定していた。また、この素晴らしいスタジアムを称えたい」と語って会見を終えた。

佐々木翔がどれだけ、チームを救ってくれたか　ショウ、ショウ、ショウ。　お願いだ、立ち上がってくれ、ショウ。　自分たちのゴール前でうずくまる19番に、紫のキャプテンに、サンフレッチェ広島の全てから、そんな想いが届いたはずだ。　確かに、ミスだったかもしれない。だが、あれは加藤睦次樹という広島ユースが生んだ「最高のストライカ

「シュンキくん、大丈夫?」練習終わりに声をかけると、東俊希が近づいてきた。「最近、全然取材してくれないじゃないですか」「いや、リハビリしていたから気を遣ったんだよ」若者は「まあ、そ

満田誠が見たい。天皇杯でプレーしている11番を見て、強烈にそう感じた。出場時間は60分だったが、その間に打ったシュートは5本。最多シュートは小原基樹の7本だが、彼は87分のプレー。時間あたりでは、満田が上だ。https://www.youtube.com/watch?v=gSPEeY_JBMs内容もいい。前半だけで4本

ミックスゾーンで塩谷司に声をかけた。「ごめん、疲れてるから。どうしても、いる?」「あー、それなら仕方ない。でも、一言だけ」「なに?」「中島洋太朗について」「天才。以上」その言葉だけを残して、彼はきびすを返した。「もっともっと、（連携を深めていくための）トレーニングが必要だね。今はなかなか（連戦によって）練習できていない

※伊藤敦樹選手のお名前を間違えていたとご指摘があり、修正いたしました。伊藤選手をはじめ、みなさまにご迷惑をおかけして本当に申し訳ありません。深く、お詫びいたします（文責:中野和也）。……リハビリの状態は？満田●順調ですね。……今週からかな？スプリントで走るようになったのは。満田●一昨日（21日）から、ですかね。ただ、ま

引退に林卓人が涙に濡れた2023年ホームラストマッチ、エディオンスタジアム広島ラストマッチは、試合そのものが今季最高の戦いとなった。林については、また改めて記事を��きたい。今回は、青山敏弘に牽引された若者たちが魅せた、緑の芝生の上で展開したサッカーについて、どうしても記しておきたい。

正直、不思議だった。町田戦で荒木隼人が負傷交代を余儀なくされた時、どうして中野就斗を3バックのセンターにミヒャエル・スキッベ監督が持ってきたのか。彼を最終ラインに持ってくることは、予想できた。山﨑大地が健在ならば問題ないが、背番号3は今、大ケガと闘っている。ベンチのメンバーを見ても、4バックに移行しないのならば、中野を

ナッシム・ベン・カリファの強烈なシュートが西川周作の指をかすめて、ネットをゆらしたその瞬間、エディオンスタジアム広島が揺れたように感じた。赤の沈黙とは裏腹に、紫の大歓声が物理的な力をもってスタジアムを動かしたように見えた。7試合連続して、先制点を許した。何度も何度もゴール前に迫るが、日本一のＧＫ・西川周作の前に弾かれる

大歓声。大拍手。NACK5スタジアムを揺るがすサポーターの大声援。それはたった一人の選手のために、贈られた。増田卓也。リーグ戦初出場の若者のために、サポーターは声をからした。手を叩いた。彼は広島の、2年目のGKである。しかし、声援は紫のサポーターからだけではない。「増田、がんばれっ」スタジアムの至るところから響く声。救

　井上愛簾は伏し目がちだった。それはミックスゾーンでのいつもの光景。しかし、少しずつ声が、震え出す。　「サンフレッチェの勝利に貢献できて……、よかったです」　トルガイ・アルスランの1点目はもちろん、2点目も井上の躍動感のあるプレーから生まれている。　松本泰志からのパスを受けた中野就斗が越道草太に預ける。シュトゥットガル

山﨑大地の負傷、今季絶望という現実は、チームにもサポーターにも大きなショックを与えた。中野就斗は「どうして、タイチが」と想いを吐き出し、山﨑にずっと可愛がってもらっている越道草太は「一緒にサッカーできないのが、つらい。自主練にもいつも付き合ってくれたりしていたし、（タイチくんの存在が）心の支えになっていた。寂しい」と言

別格。そういう存在は、確かにいる。例えばリオネル・メッシやクリスチアーノ・ロナウド。ズラタン・イブラヒモビッチや、ルカ・モドリッチ。今季のJリーグでいえば、MVP受賞が確実視されている大迫勇也がそうだった。そして12月3日のベスト電器スタジアムにも、別格がいた。マルコス・ジュニオールだ。87分、満田誠にかわって登場した

満田誠の情報を知らない人が見たら、彼が３ヶ月もプレーしていない状況だったなんて、決して信じない。満田は、離脱する前と同じようなリズムで、同じようなスピードで、８対８（アウトサイドに４人、インサイドに４人）のミニゲームをプレーしていた。狭いスペースの実戦形式であり、当然のことながら相手との厳しい接触もある。しかし、彼は全

川村拓夢はどうして、こんなことを思えるんだろうか。「自分には他にいくつも、決定的シーンがあった。それを決めていれば、こんな大きな問題には、なっていなかったはずです。僕は申し訳なく思っているんですよ、審判のみなさんに」

W杯ドイツ戦の決勝ゴール、コスタリカ戦でも途中出場から攻撃を活性化された浅野拓磨。直前の大ケガで代表入りが危ぶ

加藤陸次樹、満田誠、そして松本泰志。広島の新しい3トップ、いや「0トップ」（加藤）システムは、名古屋の5バックを蹂躙した。加藤が前に張るのでもなく、満田や松本がハーフスペースに固定されるのでもなく、それぞれが自分の判断で前に出たり、ポジションを落としたり、さらに裏をとったり。縦横無尽に走り回る広島のトリオを、名古屋は捕

全体練習が終わって約1時間、ずっとボールを蹴り続けた青山敏弘がようやく、ドレッシングルームへと戻ってきた。5月20日に行われた彼の居残り練習がハードな内容だったこともあり、翌日の京都戦

スタートは、荒木隼人だった。前半から苦しめられた佐藤凌我に身体を密着させ、ボールコントロール力を奪う。佐藤は倒れたが、主審の判定はノーファウル。当然である。荒木はただ、身体をぶつけただけ。十分、サッカーの範囲内だ。すぐに塩谷司が拾う。縦パス。ドウグラス・ヴィエイラがおさめ、左へ振った。東俊希だ。ゆっくりとボールを運ぶ。

先発メンバーで最初に、ミックスゾーンに現れたのは加藤陸次樹だった。いつもよりも早足。でも、呼び止めたい。勝利の言葉を聞きたい。PKを呼び込んだスルーパス。大橋祐紀の2点目を演出したヒールでのパス。もっとも後者について大橋は「本当にムツキのパスなんですかね。前に運ぼうとしていたように見えた」と話しているが、いずれにしても