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リコリス・リコイルの公式noteができました! ストーリー原案者・アサウラ先生の書き下ろし小説のほか、リコリス・リコイルの最新情報を掲載していきますので、応援よろしくお願いします!
ABEMAは、12月2日(土)と3日(日)に『リコリス・リコイル』を全話無料一挙放送する。【放送】『リコリス・リコイル』全話一挙 『リコリス・リコイル』は、『ソードアート・オンライン』『WORKING!!』シリーズなどの人気作でキャラクターデザイン・総作画…
リコリス。 花の名前にして、この国の平和を守るために密かに活動する少女達を指す。 そんなリコリスの最上位クラスは〝赤〟を纏うファースト・リコリスだ。 しかしながら、これは必ずしもファーストがリコリスの主力であるということにはならない。 というのも、ファースト・リコリスに求められる能力は極めて高いために、過去を見ても正規に認められた数は極わずかであり、全国各地に広く展開して活動するリ...
相も変わらず退屈な任務だった。 深夜二時四〇分、東京の片隅にある田舎。 そこそこの広さがあるものの、遊具も何もかもが朽ちつつある公園の、さらに片隅の暗闇の中で、春川フキと、まだ相棒となって日が浅いセカンドの乙女サクラは、たまに寄ってくる蚊を払うだけの時間を過ごしていた。 「なんつぅか……フキ先輩と組んでから、むしろ仕事の機会が減った気がするんスよね」 「だろうな」 サクラはその場にし...
『フキ、サクラ、出番だ』 楠木司令からの直接の指示が入り、装着していたヘッドセットに手を当て、春川フキは了解を伝える。 そう来るだろう、と予想していたが、案の定だ。 ふぅ、と西の夜空に浮かぶ月に吹きかけるように、一息ついた。 『サードを下がらせる。あとはお前達でケリを付けろ』 今回の任務は抹消対象が多く、八人のサード・リコリスに加え、フキと相棒であるセカンドの乙女クサラ、そして篝ヒバ...
今宵は喫茶リコリコのゲーム会だった。 やっているのは『人狼』。 小上がりになっている畳席に加え、カウンター席まで利用しての、九人+進行役のゲームだ。 「役職の確認は終わりました。それでは夜明けです。皆さん、顔を上げてください。」 進行役のたきなが言うと、顔を伏せつつ、トントンと座敷席のテーブルやカウンターの卓を叩いていた一同が動きを止め、顔を上げる。 「朝、村では井ノ上村長が無残な死...
弐郎の並びの時と同じように、ミズキの車の後部座席にたきな達はクラリスを真ん中にして三人で座った。 最初は助手席に座ろうと思ったが、そこには何やら少量の血や土汚れのようなものがあったので、辞めたのだ。 まるで車にはね飛ばされた人間でも運んだかのようだ……と思った時に、ボンネットのヘコみの理由も、何となくたきなにはわかった気がした。 「千束は……どこから察していたんですか?」 「え?」...
「じゃ、じゃあ、フキは、何でわざわざ私を呼び出したわけ?」 興味が抜け、困惑だけの表情と口調で……かつての相棒、錦木千束が言った。 「そりゃ……その……」 フキが言い淀んでいると、千束は赤いファースト・リコリスの制服のスカートを揺らして足を組み、のけぞるようにベンチの背もたれに広く両腕を乗せる。 そしてその動きの中でごく自然に、きょろりと辺りを軽く見渡した。 「っつぅかフキさんよ。おた...
クルミの行動は迅速だった。 千束達との通信が途切れた事に気づき、再接続を試みつつも二人のスマホにコール。こちらも接続できず。 即座にラーメン弐郎亀戸店をハッキングし、そこの監視カメラ映像を抜き取り、それを高速再生させて確認する。 ……だが、たきなが尾行者を捕まえたのがフレーム隅でギリギリで見て取れるだけで、有益な情報はあまりなかった。 近隣は商店街というわけでもないため、そこまで監...
リコリコの硬い床に投げられ、そのまま押さえ込まれていた阿久津が、ミカの太い肩をタップする。 「おぉ、すまん」 ミカがのけると、阿久津は意外なほど軽やかに立ち上がり、スーツを軽く叩くようにして払い、上着の裾を引っ張って皺を伸ばし、最後に襟も直す。 クルミも〝フン〟と鼻息を吹いて、淹れてもらっていたココアを口にする。それでようやく心が落ち着いてきた。 自分もまだまだだな、とクルミは思う。...
※本作は錦木千束と井ノ上たきなのどうでもいい日常を切り取ったものです。過度な期待は大変危険ですのでおやめください。 「あー、なんか無駄に疲れたー」 カランカラン、と扉に取り付けられたカウベルが鳴る。 たきなと千束が喫茶リコリコの扉を開けたのは、丁度深夜〇時を回ったタイミングだった。 予想以上に任務が長引いてしまった。 とはいえさしてハードでもない任務である。 喫茶リコリコ営業終了よ...
真島が小さいリボルバーを使う理由、それをロ���太は考える。 「……いや、わかっている。リボルバーの利点には確実な動作がある……けど、それにしたって、だ」 「よく言われるぜ、それ」 「アレだろ、あと、リボルバーを使う利点には、強力な弾薬が使えるから……とか。でも、アンタの銃はそういうわけでもないし」 「確かにこんな銃身が二インチのモデル��んざ、普通に考えれば護身用やバックアップで持つもんだな」...
買い物中、フキはずっと「おい」「待てよ」「なぁ」「おい」と声をかけ続けるも、千束は結局喫茶リコリコに到着するまで、無視を貫いていた。 たっだいまー! と声を上げつつ入店していく千束に、フキも恐る恐る続いていくと……店内は、暗い。 「何だ、この店、今日は何でこんな感じなんだ……」 「そりゃ今日お休みだから」 「………………じゃ、先生は?」 「いないよ?」 「いねぇのかよ!? だったら最初か...
マダムの拳。 落としきった重心で、靴をアスファルトに喰らい付かせ、太い下半身で体を送り出しながら腰、背筋の捻り、肩の回転、肘の屈伸……全身の全ての力を込めた一撃が来る。 鍛え上げられた体で放たんとするのは恐らく中華系の拳法。 彼我の体重差は目算四〇キロ、真横からの超至近距離――喰らえば、内臓の損傷は避けられず、致命傷にもなりうるのを感じさせた。 よけらない。受けられない。いや、...
膨らんだレジ袋を手に、門限ギリギリでフキはDAの寮へと戻った。 生の食材を冷蔵庫に入れ、他の食材も食堂に連なるキッチンの片隅に置かせてもらう事にした。 そうして、翌日。 その日のフキ、そしてサクラのスケジュールとしては午前の座学、午後イチに基礎トレーニング。それ以降は自由となっていた。 フキは怪我の事もあってトレーニングは軽めにするよう言われていたので、先に上がり、もんじゃ焼きの準...
可能性は十分過ぎるほどにあった。少し考えればこの事態も想定できたかもしれない。 なのに、そこまで考えが及ばなかったのは滑稽ですらある。 フキは思わず自嘲した。 ちゃんと事前に言っておけば良かったのだ。 たった一言……いや、それでもサクラは気を遣ったかもしれない。 ……遣うだろう。サクラはそういう奴だ。 なら、せめてサクラが昨日何を食べてきたのかを訊けば……いや、それも無理だ。...
「そうじゃなくて、ご飯」 「……は?」 千束が何を言い出したのかわからず、たきなは思わず振り返ってみると……彼女もまたきょとんとした顔をする。 たきなの眉間に今、皺が寄っている理由はなんぞや? とでも思っているかのようだ。 「千束」 千束がドライヤースイッチを切る。
――なめんな。 フキは、動く。後ろでも横でもなく、自分に向けられた銃口――今し方自分に向けて発砲するライダーへと向かって、飛び出す。 しゃがんだ体勢から床を這うような低さで、前のめりに倒れるように、だった。 放たれた弾丸がフキの頭上をかすめていく。 全身が床に落ちる直前、フキは左手を先に床へ突いてわずかばかり体を持ち上げると同時に、さらにそこから床を蹴り、体勢を上げることなくさらに加速。...
千束がクラリスと共に小走りに横断歩道を渡ってくるのが見えた時、すでにたきなはやるべき事を終えていた。 尾行者の肩をつかむと同時に引き寄せ、バランスを崩しかけた相手の膝裏につま先で軽く一撃を与えてその場に跪かせると、背後から髪の毛をわしづかみにしつつ、もう一方の手で逆手に握ったペンを頭蓋骨と頸骨の隙間に軽く突き立てていた。 やや上向き加減のペン先はすでに皮膚を破っており、もし暴れようもの...
「千束!」 たきなは倒れている千束に駆け寄ると、オロオロぷるぷると震えるばかりのクラリスを押しのけ、膝をつく。 敵の銃は二二口径程度の小口径の弾。一発被弾した程度なら……頭部、心臓などの重要器官以外ならまず即死はしない。治療は可能だ。 一目で頭部ではないとわかった。頭部の被弾は血が目立ちやすく、色素の薄い千束の髪ならなおさらだった。 ならば腹部か。 そもそもリコリスの制服は簡易防弾...
鍵の閉まる音を切っ掛けに、たきなは音もなく、そして迅速に警戒しながら進んで行く。 まずは隣の家の敷地に入り込み、そのさらに隣の家の敷地に……ぐるりと大きく迂回しつつ、再び公園が見える位置に付く。 彼女は、相変わらずそこにいながら、たきなを見ていた。まるで動きを完全い捕捉していたかのように。 向こうは手には何も持ったずにベンチに深く腰掛けている……が、リュックは前にある。そこに銃が入っ...
フキがサッチェルバッグを拾い上げていると、どこか遠くからバタバタというヘリの音が聞こえてきた。司令部が手配した増援だろう。 「ワタシらだけで十分だってのにな」 その時になって、ようやくサクラを思い出す。 生きているか死んでいるかも分からない相棒。様子を見に行ってやらないと。手間がかかる奴だ。そんなんで自分の相棒が務まると――。 悪態を吐きつつ、フキはサッチェルバッグ���ら防弾エアバッグ...
「明日、何食べようか。朝ご飯」 ……また食事の話が始まった。 しかし、予定を立てておくのは悪くない。起きたらすぐに準備に入れば無駄がないだろう。 たきなは瞼を閉じたまま付き合う事にした。 「……そうですね。普通に考えるなら、ご飯を炊いて、お味噌汁にお漬物と……納豆。あ、磯辺焼き用ですけど、いい海苔を仕入れていたので、それ、少しもらいましょうか。それと鮭を焼いて」 「いいねぇ! 日本の朝...
ロボ太の朝は……遅くも早くもない。 というより、朝という概念も希薄だった。眠くなったら眠るし、起きたくなったら起きる。仕事があれば眠らずにやるし、面白いトピックスがダークウェブに流れてきたら時間など無視して喰らい付く。 そんな生活のため、マンションの全ての窓は遮光カーテンで完全に塞いでいた。日光のあるなし、そしてその動きは自由気ままな自分の生活リズムを批判されているようでどことなく腹が...
喫茶リコリコにおいては、定められた――つまりは、ノルマとしての訓練メニューがあるわけではない。 時間とやる気があるのならやればいい、という空気感だった。 だからというわけではないが、より多種多様な任務が増えた事もあり、腕を衰えさせないため、いや、今以上の腕になるためにとマジメに射撃訓練を続けていたら……止められてしまった。 予算の都合がある……らしい。 その時初めて、たきなは今まで...
クルミは自分なりに答えを見いだしたいのか、俯いたまま数秒沈黙を貫いた。 「……千束が今日一発だけ仕事で撃った、その結果、射撃訓練をする事にした……か」 ん? と、クルミは顔を上げる。 「何かアレだな、こんなゲームなかったか?」 「あ、『ウミガメのスープ』ですね」 たきなが言うと、千束が、それだ、とばかりにパチンと指を鳴らし、クルミは指をさしてくる。 『ウミガメのスープ』はいわゆる推理...
「んじゃいいよ。……たきな、ちょっと試射して」 何でだ? という顔をするクルミをスルーし、たきなはマガジンを抜いた後、スライドを引いてスナップキャップを抜弾。 そして、予備の弾薬ケースから赤い弾頭の四五口径をマガジンに詰めていく。六発。 シングルカアラムは弾薬の装填が楽でいい。このマガジンの装弾数が少ないから、というのではなく、マガジン内のスプリングがそこまで強くないのだ。...
真島が蹴りでこじ開け、そして蹴りで無理矢理閉じたロボ太の部屋のドアは、バールによるテコの原理で今一度こじ開ける事となった。 どうせ今回も業者を呼んでの交換は必須だろうから致し方ないとはいえ、問題は完全に破壊されたドアを放置してそこを離れる事だ。 監視カメラとセンサーが設置してあるので、知らぬ間に部屋の物を持って行かれるという事はないだろうが……それにしたって、だ。 ただ、ここでうだ...
フキの予想通り、司令部からは先ほどの狙撃者の抹消が命じられた。 リコリスの仕事を見られ、かつ、銃器を持ち、さらに人に向かって発砲している……どう甘く見積もってもリコリスが排除すべき危険人物と言わざるを得なかった。 しかし、完全に後手を踏んでいる。普通なら上空のドローンでの監視及び追跡だけ行い、現場の人間は一度撤退して体勢を立て直すべきではあった。 だが、ファースト・リコリスのフキがい...
ミズキの車は蔵前橋通りを東へと進み、錦糸町の隣町、亀戸に入って少し行った所で停められた。 てっきり通りに入った時は、くず餅で有名な『船橋屋』か、優しい味わいで知られる『花いなり』にでも行くのかと思ったが、千束が車を止めるように言ったのはそれらを少し過ぎた路上だった。 「じゃ、ミズキ、もう帰っていいから。こっから歩いてく」 降り立った千束が、助手席の窓から中をのぞくようにして、言った。...
喫茶リコリコご自慢の地下射撃場はブース――間仕切りで区切られた射撃スペースで、弾薬を置いたりするベンチと呼ばれる台もある――が三つあり、三人まで同時に撃てる仕様になっている。 それ以外にもブースの後方には、メンテなどの作業用のためのテーブルや椅子などがあった。 そこに千束がパンコントマテの皿を置くと、早速クルミが一つを手に取って、齧り付く。 たきなもまずは射撃より先にお腹に何か入れた...
クラリスと千束が握手をした後、阿久津が立ち上がるのを待って……ようやく、そして、何故か今一度ミーティングが始まる。 「あの、先ほど訊きそびれたんですが……何で今ミーティングをやるんですか?」 思わずたきなが尋ねると、ミカが苦笑し、千束が顔を見てくる。 「ミーティングは大事だよ? たきな」 「それはわかってますけど……」 ミーティング自体に不満があるわけではないし、不要だと思った事も...
店に入った瞬間に全員が声を漏らした理由……一つは、正直さして広くない店内にも、さらに人が並んでいた事、そしてたきなの想像よりも大盛りの、何ならどんぶりから山��ようにせり上がっているラーメンが目に入ったからである。 「……あの、千束。わたしの記憶が正しければ、このお店では食べ残しがあると大変な目に遭うっていうのがありませんでしたっけ?」 え!? と、クラリスがたきなを振り返り、そしてカウン...